血煙銭湯

毎週日曜日更新

2020年01月

先週から始めている「ジャイアントまりん」13話の作業だが
ことのほか順調でもう半分くらい原稿が完成している。
ΩΩΩ「えっなんですか、じゃあ来週末くらいにはもう拝めるってことですか?」
といきたいところだがそうもいかない。
作業が早くできたのは序盤、背景のいらないシーンが続いたためで、
複数のオブジェクトが並ぶ…いわゆる巨大戦闘のシーンにさしかかると
当たり前のようにブレーキがかかってしまった。
安彦作画を見習った、効果的な省略法を使ってはいるものの
ここはやはり巨大ヒーローネタの宿命とでもいうべき手間。
もう少し我慢してね、と言わせてほしい。

さて、一月も末になったので毎年定例になっている
今年のプリキュア一年の感想会でもやろう。
僕個人の感想としては、スタートゥインクルプリキュアは
プリキュア全シリーズを通して比較すると
残念ながら決して上出来といえない内容だったようにと思う。
第一話はこれまでのプリキュアになかった無重力戦闘シーンを
富野ガンダム経験のある上野ケン作画で見事に表現し
続く二話では名作画マン楯岡錦によるプリキュア史上に残るだろう
キュアミルキィの変身バンク。
そして往年のピンクレディを彷彿とさせるEDなど、
ファンを期待させるものを次々と見せてくれたが、
うま味はそこまでだった。

三話以降はいつも通りの雰囲気になってしまったのはまあいいとして、
その後中盤のあまりに雑な展開(劇場版で主要スタッフが抜けたとはいえ…)、
ラスト周辺における12宮プリンセスによる事態の真相など、
マイナス要素はけっこう著しかった。

中でも気になる部分のうちひとつは主人公ひかるのキャラクター性。
「宇宙と星座がだーい好きな」…というわりには宇宙の知識も披露しないし
星座を絡めた話が出たのはせいぜい1回くらい、どちらかというとUMAの方にご執心。
いい子ではあるものの、ちょっと世間ズレした面白さを引き出せたとは言い難い。
生徒会長選がおそらくもっとも彼女の面白さを出せた回だが、
ああいった回がもう少しあれば…。
最終回で宇宙飛行士になりました、というのは感動的だったけど
これも本編で匂わせてくれていたらなあ。

キャラ味の引き出せてなさは作品全般にも言えることで、
その大きな要因になってしまったのは
宇宙と地球を行ったり来たりしていたところにある。
プリキュアはファンタジーだから別に宇宙の様相がファンタジックでもいいけれど、
その双方を描きながらドラマも進めるにはあまりに煩雑でキャラも多すぎた。
過去作「魔法使いプリキュア」も二つの世界を行き来する似た構成だったが、
あれは両世界を表現するのが大変だと逆算できていたがゆえに
二人主人公体制だったのだ。
それでも後半ははーちゃん主体で
みらいとリコが若干空気になってしまったが…。
それを五人主役体制でやっていたんだから、
そうとう構成をうまくやらないと難しいのは間違いない。
夏の劇場版は傑作だったらしいが、それで本編が犠牲になってしまったかなあ…。

劇場版によって本編が苦しくなるのは毎年のことだが
今年は特にひどく、中盤は頭の痛い脚本が続いた。
コスモが巨大な敵に捕まった時など
他キュア「コスモが捕まって攻撃できない!」
コスモ「敵の体を攻撃して!」
他キュア「そうか!」
そうかじゃねえよww 敵がドでかいんだからどう見たってそうすればいいだろう。
ツイッター実況でこの頭の悪さに突っ込んだ人も多かった。
またエレナ先輩が5人では随一の優等生だったため、
欠点が少なくネタにしづらかったのか
彼女単独回が中盤一切なかったのもさみしい。
敵幹部と各プリキュアの関係性も、
秋になって主要スタッフが劇場版から戻ってきてから慌てて構築したように見えた。

とはいえあまりこうした部分を責め立てるのも酷な面は確かにある。
プリキュアは企画が始まった時点で商品計画も立てないといけないので、
おそらく今回も変身アイテムやそれにまつわる12宮プリンセスの存在も
冒頭で決まっていたはずである。
それに当てはめて話を作っていくうちに、
どうしてもかみ合わない所が出てくることもあるだろう。
商品展開で投入された12宮プリンセスをもてあました結果が、
彼女たちの罪深さにつながっている可能性はある。

ストーリーや作画面で決して恵まれたプリキュアとは言えない本作だったが、
もちろんいい部分も結構あった。
セレーネ以外は全員が腋の見える大胆なコスチュームデザイン。
無能、淫獣などとさげすまれてきた妖精像を覆すプルンスの縦横な活躍ぶり。
それぞれまったく攻撃方法が異なる敵幹部たち。
そして前半、後半どちらも見ていて楽しいEDダンス。
(いつも前半か後半どっちか微妙にハズしてる雰囲気だったので)
見た目のセンスが光るプリキュアだったと言えるかもしれない。
最終回、ご都合主義的に思えた前半は夢で、
成長したひかるがララたちと再開できたかもしれないラストシーンは
我々の涙を誘ううまい構成だった。

これまでにない宇宙を取り扱う意欲的なシリーズだったものの
スケールにスタッフがついていけなかったとでも言うべきか。
東映がいくら日本最大のアニメスタジオとはいえ、
年二回の劇場版と並行しながら製作するのは
やはりキツくないですかねえ。
もちっとテレビシリーズに力を入れてほしいんだけど。
今年のヒーリングっどプリキュアはどういうプリキュアになるのかなあ。

~今週の映画~
今週はここ数年ハリウッドでよくネタにされている
ピエロ殺人鬼映画の一本「クラウン」の感想。

あらすじ
不動産営業マンのケントは、愛息の誕生日にピエロを雇って楽しませようと計画していた。
ところがそのピエロが急な都合で来れなくなってしまう。
頭を悩ませるケントの目にたまたま飛び込んで来たのは、
扱っている空き家の奥にあったチェスト(木箱)。
その中には古びたピエロの衣装一式が収納されていた。
これ幸いとその衣装を身にまとったケントは
見事息子の誕生日をにぎわせることに成功するが、
疲れてまどろんだ末、翌朝目が覚めるとどうやってもこの衣装を脱ぐことができない。
服に電動ノコギリを立てればノコギリが折れ、
鼻飾りをもぎとれば肉の一部までもっていかれてしまう。
得体のしれない状況におののきつつ、
チェストのあった家のことを調べ始めたケントは
やがておぞましい真実へとたどりつく…。

この手の業界には、時々プチブームみたいなのが起こり、
最近だと人民寺院事件をネタにしたカルト集団ホラーが
何本か同じ時期に生産されたりしている。
こういった流れが大ブームへと発展したのが70~80年代の覆面殺人鬼とか
ゾンビとか、最近のサメ映画とかにあたる。
本作もいわばピエロ殺人鬼のプチブームに製作された一本で
同様の作品には「道化死てるぜ」とか「テリファー」がある。
もしかすると近作の「IT~それを見たら終わり~」もその流れだったのかもしれない。

さて、本作はもともと映画のフェイク予告編として作られたものだったが
これが名匠イーライ・ロスの目に留まり、
彼のプロデュースで本当に作られることになった
という経緯がある。↓がその予告編である。


本作を視聴してみて驚かされたのはそのスピーディさだ。
普通なら前振りがあって、
実際にピエロになるまで30分くらいかかっちゃうもんだが、
本作は冒頭で即ピエロになっちゃって、
原因を知る人間にたどりつき、呪いを解く方法として殺されかかるまで
なんと25分くらいで到達する!
速い!なんというテンポの良さ!
その後も子供を食べたくなるというピエロの呪いに取り憑かれたケントが
どうにか人を避けようとしたり、自殺を図ったりするのだが、
何しろ見た目がピエロだから子供の方から寄ってきちゃう。
「やめろ、俺に近寄らないでくれ…」といった具合に
子供から離れたいのに子供から寄ってくる状況に懊悩する様は
あまり見ない殺人鬼映画といった体でなかなか惹きつけられる。
あとこのピエロ、血の色が七色だったしてピエロらしいユニークさと不気味さを
うまい具合に同居させているのもgood。

……しかしこの面白さも視点がケントから女房のメグへバトンタッチしたとたん
普通のモンスターホラー映画にありがちな展開に陥ってしまったのは
なんともはやもったいない。
おまけにストーリーまでもたつき始めちゃう始末。
最後までケント視点で「人を避けたいのに人が寄ってくる」
って構図に苦しんでた方が面白かったんじゃないかなあ。

それとは別に他にも良点を挙げるとするなら、
昨今ホラー映画でも子供を犠牲にするのはどうか
みたいな風潮があるなか、子供でも容赦なくぐっちゃんぐっちゃんに
殺しまくる展開は非常によろしい。
こんなもん見なくたって子供を襲う奴は襲うし襲わない奴は襲わないのだ。
プロデューサーのイーライ・ロスもフィクションとしての
こうした根本を理解して通したのだろう。さすがだ偉い。

実を言うと「ネトフリにあるテリファーが相当怖い」と
youtubeでも紹介されていたのだが、僕が契約を始めたころにはもう無かったので
この映画を選んだ経緯がある。すまんかったロス。
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商品紹介の欄にあるように、エロ同人「魔王様の繁殖記」の新作が
出たわけですが、それを登録した15日にとんでもない大ポカをやらかしてしまい、
精神状態が最悪で、正直ブログとか書きたくないくらいなのだが、
まあそういうわけにもいくまい。

だから先週、pixivとかにプリキュアのえっちっぽい絵を上げたりしているが
その解説をしたり、ネトフリのタイタンズの感想とかも言いたいけど
わりとそんな気分じゃあない。次の同人用やジャイアントまりん用の
新キャラもまだデザインしていないのだ。

ブログを見に来ている人には悪いが、よほど大きな事情がない限り
週一で見てる映画の感想をくっちゃべるのがメインになりそうである。
(¦3[_____]
キュアブラック10000

キュアアクア0000

星空育代0000

でもちょっとだけ今回描いた絵に触れておくと、
スパッツも悪くないよねという意図でスパッツキャラ三人を選ぼうとしたのだが、
最後の一人を決めかねて、うーんそうだ育代さんに娘のプリキュアコスを
させてあられもないポーズをさせよう!
と思ったのに、気が付いたらコスプレさせず、
いつもの服装で脱がしていた。
おぱんつを描きたかったんだ…_(:3 」∠)_

今回の新作同人販売を機に、ここに来た人へ今後の予定を話しておくと
次は久々に一般向けの漫画を一話描きます。諸事情があって休んでいたんでね。
そのあと次の同人の半分を描いて、
でまた一般向けを一話描いて
さらにそのあと同人の残り半分描いて売りに出すので、
エロ同人の方を目当てにしている方は、
しばらく間隔が空いてしまう点にご容赦を。
それもあって半額セールとかやったのよ。

Ci-en活動を期待してる人もいるかもしれないが、
いろいろあってうまくいかないのと…
あと実はガイドラインが他の支援サイトより厳しい可能性があって…。
僕の支援者向けの絵ってわりと修正がギリギリなんだよね。
ファンティアやfanboxって運営がそんなに検閲してないんだけど、
Ci-enはやってるらしくって、現状の修正具合では消されちゃうかもしれない。
そういう悩ましい部分も出て来たのだ。

~今週の映画~
今回はアメリカ産のポリスアクション?クライムアクション?
とにかくそういう類の映画「ボーダーライン」の感想。

あらすじ
アリゾナ州チャンドラーで誘拐事件の突入捜査が行われる。
FBI捜査官のケイトは容疑者の一人を射殺するも、
その家屋の壁の中から無数の死体を発見する。
誘拐事件の被害者ではない。
誘拐犯たちの絡んでいた麻薬カルテル絡みの犠牲者のようだった。
さらに捜査を進めるFBIだったが、屋外の物置が大爆発を起こし
捜査官二人が死亡する大事件に発展する。
事態を重く見た国防総省が介入し、ケイトは上司の推薦を受けて
国防省の責任者マットに連れられ、カルテルの親玉ディアスの兄弟を
メキシコから移送する任務にあたる。
その任務の最中、ケイトは所属不明の外国人アレハンドロと出会うのだった。

この映画、なんと冒頭にタイトルが出ない。
原題は「Sicario」といい、冒頭ではタイトル代わりに
その意味とルーツについて解説が入る。
主人公の役職がFBIなのでポリスアクションと言っていいと思うが、
僕もこの手の作品はいくつか見てるけど、こんなに始まりから終わりまで
胃が裏返るような緊張感がある一方、主人公がほとんど役に立たないという
映画は見たことがない。

主人公が役に立たない? じゃあつまらないのかな、ということはないぞ。
ケイトが派遣される任務は、デルタフォースが出張るくらい本気にヤバイ案件で、
FBIとはやり方も思想も何もかも違うのだ。
「じゃ、なんで私たちが必要なのよ!」
と終盤にケイトも思わず叫んでしまうが、その答えはちゃんと用意されている。
それは言うとネタバレになるから言えないが、
なんてこったい、これは主人公も憤るのは仕方ない。

納得がいかないけれどもこうするしかない、
政治的にも肉体的にも精神的にも屈したケイトは
結果を受け入れて終わる。
そこでタイトル「Sicario」がデーン!
そういう意味だったのか! と視聴者は膝を叩く。
内容も構成もすばらしい、とても見ごたえのある傑作である。

吹き替えもマット役の大川透さんとアレハンドロ役の菅原正志さんが
本編との違和感がないようスペイン語にチャレンジしていて嬉しい。
音響監督が手抜きだと、こういう他言語シーンや格闘シーンの息遣いを
原音のまま使ったりしててしらけちゃうんだよね。

チョイ役としてパニッシャーで知られるジョン・バーンサルが
吹き替えも同じ坂詰貴之さんで出てるのはちょっと注目かな。

…先週ホラー見ようぜとか言ってたのになんだこれは
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2020年も明けて二週間近くになった。
エロ同人と一般向けを一話ずつ交互に描いていくぞ!
と決心して作業を一週間ほど打ち込んだはいいが、
思いのほか効果はあがっていない。

いくつか心配のメッセージをいただいたのできちんと説明していくが、
数年前、僕が本格的に漫画へ打ち込みはじめた頃は
寝ても覚めても漫画を描いていたような状態で、
しかも内容もハードでバイオレンスだったから
一話仕上げるのも大変な時間がかかった。
しかし続けるうちに作画慣れや合理的な作業方法なども確立し、
さらに去年の6月には液タブの導入効果によって、
漫画に打ち込み始めた頃の平均作業時間に比べると
6分の1以上くらいの短時間でできあがるようになったのだ。
おかげでゲームやらアニメやらドラマやらを
楽しむ時間も確保できているのだが、
ようするにその増えた余剰時間をいくらか削り
漫画の方へ再度回したらいいんじゃない?
ってのが「ジャイアントまりん中断の経緯と再開の目途」で
話した作業時間の増加、というわけ。

とはいってもさすがに寄る年波もあり、
週末にもなると体力というよりは脳が疲労困憊で、
ろくに下書きもできずに眠気に負けてしまうようになった。
いやさもちろん作業時間の増加は、まったく効果がなかったわけじゃない。
ちゃんといつもより多く描けているのだが、
それでも想定していたよりは少ない。
「燃えよペン」で言うところの
「この予定表には体力の計算が入ってないのだ!」
ってところか。

だから同人誌「魔王様の繁殖記」②については
予定では先週中に本編を仕上げ
今週は修正とか表紙とかデザインとか、
あと余った日にちでいつものエッチなイラストとかを描く予定だったのだが、
そうはうまくいかないようである。
だからって無理をしても筆致がおかしくなって
かえって修正に手間がかかるので無理はしないつもり。
……ご心配をおかけします。

ところで支援サイトでカンパしていただいた支援金、
先日ようやく入金手続きをした。
使い道は前はフィギュアを買おうとか言ってたけど
よくよく考えたらもっと買わなければならない重要なものを思い出した。
現行のPCも買ってそろそろ結構な年月が経っており
交換用のSSDを買わなければ!

……色気のない選択だな、と支援者は唖然としてるかもしれないが、
いきなりPCが死んだらシャレにならないので
現実的な選択じゃないかと思う。
壊れてからじゃ手遅れだすかんね。

ブログの文章量を減らそうという方針も立ててるから、
まあ今週はほかに大して話すべきネタもないんですが、
えっちな絵の方はプリキュアスパッツ娘シリーズにでもしようかと考えている。
……漫画の方が大変なんで、あんまり難しいこと考えずに
シリーズ化できるネタにしたいんですよー。
とりあえず三人ほど適当にみつくろう予定だ。

~今週の映画~
今週はネットフリックス限定映画「ビーストオブノーネイション」の感想

あらすじ
西アフリカの小さな村に住む少年アグーは、
近所に国連平和維持軍が駐屯していることもあり、
国内の争乱とは無縁な平和な暮らしをしていた。
しかし情勢の変化により平和維持軍が移動。
政府軍と反乱軍の戦線が村を巻き込む恐れがでたため、
男たちは土地を守るために残り、女子供は安全な場所へ逃げることになる。
しかし移動に使える車は限られており、
アグーは母親や幼い妹とともに逃げることは叶わなかった。
間もなく襲って来た政府軍は、残った住民を一方的に反乱軍と決めつけ虐殺を開始。
祖父も父も兄も殺されたアグーは命からがら森の中へ逃げ込むが、
行く当ても金も食料もない少年に成す術はない。
飢えたまま森の中を放浪するうち、武装する若者の集団に捕らわてしまう。
彼らは反乱軍で、突然現れたアグーを政府軍のスパイだと疑う。
死の際に立たされたアグーの前に、ひとり年かさの「指揮官」と呼ばれる男が現れ
アグーを反乱軍の一員として育てることを宣言する。

ウゾディンマ・イウェアラ原作の小説を
日系人のキャリー・ジョージ・フクナガの脚本によって映画化した。
ここんところ映画ではハズレを引いていたこともあり、
じゃあ賞を取った映画でも見てみようじゃないの
ということで選んだのだが
「ヤバイ、これはドンパチを楽しむ戦争映画じゃなく、マジメな社会派映画だ!」
と早々に嫌な予感が。
でも選んでしまったからには仕方がない。
このブログらしからぬ作品だがとりあえず見ていこう。

本作は映画なのでもちろん全編フィクションだが、
実際の泥沼化したアフリカ内戦はおそらくどれもこういう状況
なんだろうなという感慨がある。
youtube話題のアニメーション「オブソリート」でも
子供たちを兵士に起用する似たようなシチュエーションがあったが、
あっちは本作の指揮官にあたる少佐が、
拾った少年少女たちを一人前の戦士として正当に扱い、
戦術戦略眼も確かといった「尊敬に値する悪役」であるのに対し、
本作の指揮官は、最初そのように見えるが実態は真逆である。

彼は言葉巧みに少年たちを戦士として育て上げ、尊敬を勝ち取っていくものの
車を得るために民間の建築技師たちを政府軍と騙して皆殺しにさせたり、
副官に仲間の犠牲をいとわぬ戦いを強いたり、
性欲処理のために部下の中でも年少の子たちを使ったりする。
「俺はお前たちの父だ、そして子は父を守るもの」
などとのたまう、ただのゲス野郎なのだ。
そんな彼ですら、いちおう命をかけて戦っているのに、
いざ手柄をあげてバックについてる政治家へ昇進を期待し会いに行っても、
命をかけていない客の東洋人よりはるか下に扱われてしまう。
(名言されていないが、この東洋人はアフリカ資源の搾取を狙って
有力者に金をばらまいている中国人のようである)

こうした不当な扱いの連鎖こそ
アフリカ内戦が泥沼化している原因、というのが本作の趣旨か。
使い捨てにされるアグーたちは、その過酷さに耐えられずに薬に逃げるが、
その幻覚による快楽はむしろ苦しみを増し、残忍な形で外へ吐き出される。
アグーは反乱軍に身を投じるとはいえ、
なにも父親が殺された仇を撃ちたかったわけじゃない。
ただ生き延びるためにそう言い、生き別れた母親に会いたかっただけなのだ。
そうして生き延びた末、幸運にも自由を得たとしても、
戦う事以外教えられず、地獄を見て来た少年たちは
その多くが再び戦争の中へ舞い戻っていってしまう。
寄せては返す波のように。

戦争を描いた社会派映画の例にもれず、後味のよろしくない傑作。
しかしこの手の映画では「エルサルバドル」が一番後味が悪かったので
あれに比べると見やすい方だと思う。
まー、日曜洋画劇場もようあんなもん放送したわ。
時代やったんやなあ。



……ほらー! 社会派映画なんか見るから感想もマジメな
感想になっちゃったじゃないか!
ホラー見ようぜホラー!
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2020年になりました!
漫画の読者の皆様も、このブログだけを見ている閲覧者様方(いるの?)も
今年もよろしくお願いいたします。
先日各方面に投稿した通り、
今年は一般向けと成人向けを交互に描いていくと宣言したので、
無理しない程度に無理しながら生産を続けていこうと思います。
さしあたっては「魔王様の繁殖記」第四話を描いて
第三話と一緒に販売することが最初の目標。

えー、それで2020年の第一回は去年もやりました、
年末年始に見た映画の感想特集をやっていこう。

エウレカセブンエヴォリューション1
アネモネ・エウレカセブンハイエヴォリューション2


本作に関してはあらすじを述べない。
もともとこの映画はテレビシリーズ「エウレカセブン」の
語られなかった部分を新作として製作・再構成する
言わば「エヴァ新劇場版」的な作品のように
公開前は宣伝されていた。

エウレカセブンの新劇場版だと! と当時のファンは色めき立った
…そのはずだったのだが、実際に見た人の感想は全く芳しくなかった。
ハイエヴォ1はすでに二年も前の作品だが、ハイエヴォ2の
(劇場アニメにしては)あまりに早いネトフリ登場からして、
興行成績のヤバさががうかがえる。
まあ見てみないことには何も言えまい。

しかし僕も見てみた感想は、噂通りの斜め下で
「ナニコレ…」
という言葉しか出なかった。

もちろん冒頭の新作画シーンはため息が出るスピーディさと迫力で、
絵に関してはまったくぐうの音が出ない圧倒的完成度だった。
ところがレントンの父アドロックがひたすら口にする
「私が間違っていた!」
とは何を間違っていたのか映画の頭から尻まで見ても
結局どこにも語られていなかったり
(テレビ本編から察すれば、スカブコーラルとの接し方ってことなんだろうけど)、
やたらと人物やメカの素性を字幕で表示したり
「アニメとは絵とセリフで語ってナンボ」という
基本的なスジを外しちゃってる点が気になりまくる。
字幕に関してはエヴァもモノの素性を表示する場面は多々ある。
とはいえその文章量はごくごく短い。
本作の字幕は「なんたらかんたらああでこうでどうだ」と
やたらめったら長いうえに表示時間が短く、
普通に見ていたらそうそう読み切れない。
まるで露骨に「ビデオ買え」と言われているようだ。

で、ハイエヴォ1の本編にあたる一時間ほどの総集編部分は
なぜかチャールズとレイ編が中心で
エウレカとレントンの関係性もろくに語られないし
しかもやたらと時間軸が前後しまくる。
テレビ版を見た人はいいかもしれないが、
もう本編が10年も前の作品なのに、
基本ストーリーもろくに説明せず、
レイ・チャールズ編だけで終わるってのは…。

いやもちろんレイ・チャールズ編が重要なのはわかる。
僕もこの二人は大好きだ。
逆にテレビシリーズ中盤までのホランドは大嫌いで
エウレカに選ばれた救世主が自分ではなく生意気なレントンだったからって
それをボッコボコに殴る蹴るわ、それを周りの月光号の面々も止めないわとひどい。
(これが後半になって成長するから藤原啓治さんも
シンパシーを覚えたんだろう、そこの良さ分かるのよ、念のため)
それに比べるとレイとチャールズってずっと大人だった。
真剣にレントンを受け止め、彼が憎きエウレカの仲間だと知っても
それを責めたり、帰るのを止めようともしなかった。
この二人との時間がレントンの成長に重要だったのは確かだ。

が、である。
この映画、レントンの成長を描き、レイとチャールズの別れに涙を誘ったはいいが、
肝心かなめのレントンの想いが結実するシーンが描かれない。
クライマックスにあるべき戦闘シーンすらない。
えっ、この映画なにやりたかったの…。
視聴者の期待が置いてけぼりなままエンディング。

こんな展開がバンダイに怒られたのかどうかは知らないが、
後編にあたるアネモネ編ではまったく別世界線のアネモネが、
世界を侵食するエウレカセブンにデジタルダイブしてテレビ版アネモネと同化し、
ニルヴァーシュと戦うという、新作の合間に総集編をはさんだ
「もうなんだかわからねえ」アニメになっていた。
ほぼ新作と言っていいのだが、この本編ではわりと普通の女の子であるアネモネが
ダイブしたとたん、あっちのアネモネ同様狂暴になるのは違和感が大きい。
1とは違ってこっちではクライマックスの大戦闘こそあるものの、
結局1と同じように重要な「想いが結実する」シーンがなく終わってしまう。

…だから何がやりたかったんだよ!
1にしろ2にしろエウレカセブンの主要テーマである
「ねだるな勝ち取れ」は確かに語られているが、
その勝ち取る瞬間が描かれないのでは意味ないやん。
2で意味ありげに動き出したデューイも結局何もやらないし。
こんな中途半端な映画作るくらいなら、前作「ポケットが虹でいっぱい」
みたいなきっちりテレビ編と分けた完全新作にした方がよかったんじゃあ…。

1の時は藤原啓治さんが休養、2の時は製作中に辻谷耕史さんが逝去と
呪われているんじゃないかと思える前後編である。

ヴァレリアン

あらすじ
長年拡張され続けた国際宇宙ステーションの質量が地球にとって危険になり、
一千もの種族が居住する"千の惑星の都市"「アルファ宇宙ステーション」として
外宇宙に射出された。
数百年後の西暦2740年、アルファの連邦捜査官ヴァレリアンと
その相棒ローレリーヌは任務で惑星キリアンへと向かう。
旅の途中、ヴァレリアンは惑星ミールに住むヒューマノイド型種族が、
巨大な宇宙船の墜落で滅亡する不思議な夢を見る。
キリアンに着いたヴァレリアンは別次元にあるバザールに潜入して、
あらゆるものを複製できる小型生物のコンバーターと
凄まじいエネルギーの秘められたパールを入手。
そのコンバーターとパールはヴァレリアンの夢に出て来たものであり、
宇宙船に戻ったヴァレリアンは、ミールが30年前に破壊されたことを知る。
アルファに戻った二人は、危機的な汚染の問題を話し合うための
種族間のサミットで司令官のフィリットを護衛。
ところがサミットはヴァレリアンが夢で見たヒューマノイドに襲われ、
フィリットは誘拐されてしまう。

リュック・ベッソンのフィフスエレメント以来になる(よね?)
本格SFアクション映画。
フランスのコミック「ヴァレリアンとローレリーヌ」を原作とし、
そのド派手なトレイラーと監督のネームバリューから期待されたものの、
興行的には大失敗。
ダンケルクと同じ週に公開されたから…ばかりではなく
この映画、冒頭部分は面白いのに後半にいくほど
脱線や無駄なギャグ、会話シーンが増え、
あげくクライマックスの戦闘も盛り上がりに欠けるといった
アクション映画としてあってはならない「竜頭蛇尾」だったからだろう。

話の黒幕も宇宙征服とか破壊とかじゃなく、
自らの保身を図るためと、あまりに小物なのも展開として弱い。
しかも日本語版では途中重要な働きをする変形生物の声を
よりにもよって「ゆりやんれとりぃばあ」とかいう俳優でも芸達者でもない
芸人にやらせたため、さらに面白さが大幅減退している。
吹き替え版は日野聡、沢城みゆき、大塚明夫、関俊彦、富田耕生
といった本当に豪華で上手いキャスト陣だけに、
こういうのが一人混ざると、いかに質が下がるかご想像いただけるだろう。
しかも変身種族だよ。沢城さんのキャラに変身したらすごい演技力になるのに
元に戻ったらまたドヘタになるとかおかしいでしょ!
…まだ美人声だったらいいんだが、この女芸人声もよくねえしなあ…( 一一)

その一方、SF作品としてのビジュアルは本当に素晴らしい。
何十という多種多様な種族、文化が登場し、巨大なアルファの内部では
彼らが性質ごとに必要な居住区を設けて共存している。
こうした種族や文化の違いをしっかり魅力的に描けている点において、
フィフスエレメントでもそうだったけど
ベッソンのビジュアルセンスは光っている。
僕がスターウォーズ8の何が一番失望したって、こういうところなんだよ。
先日も言ったけどあのカジノシーンがあまりにも欧米風だったところ。
何で多様な種族がみんなタキシードやナイトドレスっぽい服着とんねん…。
「金持ちはこんなんやろ」…という大作SFではやっちゃいけない適当なことを
やっちゃったんだもんなあ…。

貞子VS加耶子

あらすじ
女子大生の有里は、親友の夏美から両親の結婚式のビデオのダビングを頼まれる。
その過程で偶然入手した、見ると電話がかかってきてその2日後に必ず死ぬという
“呪いのビデオ”をナツミが見てしまう。
二人は都市伝説の研究家であるの森繁教授に助けを求め、
霊媒師に夏美を除霊してもらおうとするが、
貞子の呪いは強烈で逆に霊媒師と、ついでに森繁も死んでしまう。
一方、入ると必ず死を遂げるという“呪いの家”の向かいに引っ越してきた
女子高生の鈴花は、ある夜その家の近くで行方不明になっていた
小学生4人のうち一人が呪いの家の中にいるのを目撃。
かねてより呪いの家に興味を抱いていた彼女は遂に家の中に入ってしまう。
その結果、鈴花を助けようとして家に入った両親が犠牲となり、
命からがら逃げのびた鈴花にも呪いによる死が迫っていた。

年末年始にかけて三本ほど(実質二本みてえなもんだが)見てきたが
いずれも当たりとはいえない出来だったので、
そろそろホラーでも見て気分を癒したいなあ
なんて思っていたんだけど、ネトフリではすでに「これぞ」といった
ホラーを制覇してしまっていた。
しょうがねえから見えている地雷だったこれを踏んだのである。

ハズレというかアタリというか見る人によって異なる本作だが
リングシリーズも呪怨シリーズも
回を重ねるうちに原作者や初代監督の手を離れていき、
結果今やただのギャグになってしまった。
この一作前にあたる貞子3Dシリーズからしてすでに
恐怖の押し売り、ツッコミどころ満載で
観客を本当に怖がらせようとしてるとは思えない。
本作にしても過去作の名場面をなぞったようなシーンを織り交ぜつつ
貞子の設定を安易に変えたり、俊夫が常に変顔をしているなど、
両方のシリーズをリスペクトしてるように見えて
実はバカにしているようにも見える。
(俊夫こんな変顔キャラじゃなかっただろ…)

企画側としては「リングも呪怨もそろそろ頭打ちだな~
せや、この二つを対決させたら斬新で画期的じゃないか!」
などと膝を打ったのかもしれないが、実を言うとこの流れは
「ジェイソンVSフレディ」どころか、さかのぼること1940年代の
「フランケンシュタインの屋敷」とか
「ドラキュラとせむし男」における
フランケンシュタインとドラキュラと狼男とせむし男の夢の競演から
続いているホラーモンスターオンパレード祭り。
言わば伝統芸みてーなもんで、どこも斬新で画期的でもねーのだ。
これを元ネタとしたのが藤子A先生の「怪物くん」と
「悪魔城ドラキュラ」シリーズなのはまた別のお話。

しかしこれら上記したモンスター夢の競演は面白かった。
それは各怪物の個性のぶつかり合いがあったから。
フランケンとドラキュラと狼男、みんな違う
ジェイソンとフレディも好対照、
しかし貞子と加耶子はそんなに違わない。
タイトルだけ聞くとなんだか凄そうだが、
ダラダラと怖くもない呪いの過程を一時間半くらい引っ張ったあげく
実際に対決が始まっても両方ともアクティブとは言えないキャラなので
引っ張ったりぶつかったりするだけと地味で地味でしょうがない。

他にも貞子の呪いのビデオが昔と内容が全然違う(井戸が出てこない)とか、
貞子の呪いのルールも違うとか
まともなツッコミどころは多いが、
しかしこの映画にホラーではなくバカ度(楽しさ)を加味し
Z級スレスレなギャグとして昇華させているのが
中盤から登場するオカルト事件のプロ・ケイゾウである。
霊媒師が「こんなこともあろうかとケイゾウを呼んでおいた」
と発言するあたりからもう空気がおかしいが、
本人が登場したとたんバカの度合いが急上昇するのは、
ダメを通り越したすばらしさに拍手したいほど。
「バケモンにはバケモンをぶつけるんだよ!」の名言を放つのもこいつ。
徹頭徹尾怖くない映画でもあるし、
このバカっぷりを楽しむギャグ映画として見るならば本作は全然アリだろう。

…いや僕はホラーを楽しみたかったんだけどね。

でも製作した角川は角川映画40周年記念作品に
こんなバカ映画を据えてよかったの…?
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